医師による「診察」とカウンセラーによる「カウンセリング」
私たちがいつもカウンセリングを行っている「メンタルサポートここころ」には、毎日、さまざまなお問い合わせが届きます。
その中によくあるものとして次のようなものがあります。
「今日、診察を受けたいんですが、予約できますか?」
「診察時間はどれくらいかかりますか?」
「診察の後で薬も出してもらえますか?」
「診察に家族も同席できますか?」
お問い合わせの内容は異なりますが、いずれにも共通して言えるのは「診察」という言葉が含まれていることです。
ここまでは、多くの人が気づかれたと思います。
さらに察しの良い人であれば、「何かカン違いしているのでは?」と思ったのではないでしょうか?
そうです、病院やクリニックなどの医療機関(この場合は主に精神科や心療内科)の医師による「診察」と、カウンセラーによる「心理カウンセリング」を混同している人が意外に多くいるということなのです。
正しく理解している人からすれば、「何を馬鹿なことを言ってるんだ?」と思われるかもしれません。
しかし、カウンセリングというものが日本ではまだ十分に浸透していないせいであり、やむを得ないことと言えるのかもしれません。
だとしたら、私たちカウンセラーは、カウンセリングを行うだけではなく、「カウンセリングの普及」ということにも、より一層力を入れていかなければならないのだと、痛感するところでもあるのです。
いずれにせよ、お問い合わせをしてこられる人の中には、「診察」と「カウンセリング」を混同し、カン違いをしている人がいるのは事実なのです。
そこで今回は、それぞれの言葉の意味と内容のほか、両者の大きな違い、具体的にどのようなことをするのかを確認していきましょう。
【医師による「診察」】
「診察」とは?
WEB上のフリー百科事典によると、次のように説明されています。
『診察(しんさつ)とは、医師・歯科医師が患者の病状を判断するために、質問をしたり体を調べたりすること。医療行為の一つである。医療系国家資格者以外は行うことができない』
まず、「診察」は医療行為であるため、これを行うことができるのは、医師・歯科医師に限られます。
医師は、医学に基づく「病気の治療」の専門家です。
通常、患者の話し(悩みや症状など)を聞き取り、それに合った薬(抗うつ薬や抗不安薬、睡眠導入剤など)を処方したりします。
また、患者の悩みや症状に応じて、メンタルヘルス(心の健康)に関するアドバイスをしたり、日常の生活習慣の改善・見直しなどの指導を行なうこともあります。
このように、単に「薬を出す」だけではなく、総合的な対策を講じることで、医学的に「症状の回復」を目指していきます。
しかしながら、実際の精神科・心療内科の医療の現場においては、患者の話しを十分に聞くことなく、安易に薬の処方が行われているのが現状と言えるので、病院選びは慎重に行う必要があります。
【カウンセラーによる「カウンセリング」】
「カウンセリング」とは?
こちらも同じくフリー百科事典の説明を見てみましょう。
『カウンセリング(英: counseling)とは、依頼者の抱える問題・悩みなどに対し、専門的な知識や技術を用いて行われる相談援助のことである。カウンセリングを行う者をカウンセラー(英: counsellor、米: counselor)、相談員などと呼び、カウンセリングを受ける者をクライエント(client)、カウンセリー(counselee)、相談者/来談者などと呼ぶ』
医師による診察が「医療行為」であるのに対して、カウンセラーによるカウンセリングは、「援助(支援)行為」と言うことができるでしょう。
そして、カウンセラーは心理学に基づく「心の専門家」であると言えます。
しかし、必ずしも医師のように国家資格(公認心理師)や職能資格(臨床心理士)を必要としません。
これらの資格以外にもカウンセラーに必要な知識と技術を有することを証明する資格はたくさんあるので、そうした資格を取得するなどして、カウンセリング技術を習得していれば、カウンセリング業務を行なうことが可能です。
心理学やカウンセリング技法などを習得したうえで、カウンセラーは相談者(クライアント)の悩みや症状にじっくりと耳を傾け、心に寄り添いながら、自ら悩みを解消していけるように、心理的な援助をしていきます。
悩みの解消や問題の解決は、相談者自身が行うことであり、カウンセラーはそのサポートに重点を置きます。
そのため、医師のように、積極的に助言(アドバイス)をすることは基本的にありませんし、ましてや、上からの視点に立った「指導」などを行なうことはありません。
しかし、生活習慣、特に睡眠や休息などについては、改善の余地がある場合に、必要なアドバイスを行うことはあります。
また、ストレスへの対処法や発散法などをお伝えすることもあります。
ただし、言うまでもありませんが、薬の処方や診断書の発行は行っていません。健康保険も適用されません。
カウンセリングを受けたことを証明する必要がある場合には、カウンセリング料金の領収証を利用することをお勧めします。
メンタルサポートここころでは、お申し出いただければ、すぐに領収証をお出ししますので、遠慮なくカウンセラーに申し付けていただければと思います。
カウンセリングと診察を併用してもOK
上記のように、医師による「診察」とカウンセラーによる「カウンセリング」はまったく別のものであることがおわかりいただけたと思いますが、こうなると次に疑問として出てくるのは、「どっちを選べばいい?」ということではないでしょうか?
答えは、どちらかひとつというものではなく、それぞれ異なる役割やメリットがあるので、ご自分の状態に合わせてうまく使い分ければいいでしょう。
私たちのカウンセリングルームに来られる人は、カウンセリングだけを受けている人もいれば、病院の診察と併用している人も少なくありません。
メンタルクリニックなどの受診日に合わせてカウンセリングの予約を入れている人も多くいます。
病院で診察を受けたほうがいいのか、カウンセリングを受けたほうがいいのか判断がつかない場合は、まずはカウンセリングを受けに来ていただければと思います。
しっかりお話を伺ったうえで、受診が必要かどうかの参考意見をお伝えすることができる場合があります。
一人で抱え込んで悩んでいても、結局、何も見つからないということがよくあります。
そんな徒労を繰り返すよりも、まずはカウンセリングを受けに来てください。