「心の病気や予備軍の人が行くのがカウンセリング」という誤解
近年、メンタル不調を抱える人が急増しているにもかかわらず、心理カウンセリングを受けることが一般化しているとは言えない現状があります。
その原因となっているのは、心の病気に対する誤解、それも差別や偏見が挙げられるでしょう。
カウンセリングを受けることについて、「気が弱いと思われる」とか、「うつ病予備軍の人が行くもの」という理由で敬遠する人が少なくないようです。
そもそも、「心を病むのは、意志が弱いからだ」「生まれつき気が弱いから、うつ病になるんだ」といった、差別的な偏見が根底に存在していると言うこともできるでしょう。
そして、精神科や心療内科に通うのと同じように、カウンセリングに行くのは、「(心の)病気だから」「精神を病んでいるから」と見なされてしまう傾向が強くあります。
しかし、カウンセリングは、必ずしも心の病気の人や予備軍の人が行くものとは限りません。
もちろん、「意志が弱い人」が行くところでもないのは言うまでもありません。
カウンセリングは「心のメンテナンス」
カウンセリングは、必ずしも心を病んだ人が行くものとは限らないと述べました。
たとえば、車を運転する人であれば、故障したり、不具合が生じているわけではなくても、ガソリンスタンドで給油ついでにエンジンを見てもらったり、タイヤをチェックしてもらったりすることがあるはずです。
そうすることで、「エンジンオイルが減っている」「タイヤの空気圧がやや低くなっている」といったことがわかり、事前に対処することができます。
これにより、現状、問題は生じていなくても、将来、発生するかもしれない故障や不具合といった問題を未然に防ぐことができ、快適な運転を継続できることになるわけです。
もう少し身近な例を挙げるなら、例えば女性の場合であれば、ドライヤーの熱や紫外線などでダメージを受けた髪をケアしてもらうためにヘアサロンに行ったり、爪を綺麗にするためにネイルサロンに行ったりすることが一般的になってきています。
また、男性女性を問わず、定期的にマッサージや整体院などに通って全身のケアをしている人も増えてきています。このような人たちは、日頃の疲れを解消したり、身体の歪みを修正したりすることで、車で言うところの故障や不具合を未然に防いでいるのです。
こうしたことは、私たちの「心」にも必要なことと言えるのです。
今のところは、心の病気ではないけれど、このままでは病気になってしまうかもしれないので、そうなる前に心の状態を整える。
つまり、カウンセリングを難しく考えずに、「心のメンテナンス」として、気軽に受けてほしいのです。
たとえば、「髪が傷んできたからヘアサロンに行こう」とか「疲れが溜まっているからマッサージに行こう」というのと同じように、「心が重いからカウンセリングに行こう」「気持ちが沈みがちなのでカウンセリングに行こう」と考えてみてはいかがでしょうか?
心と身体はつながっている
一般に、「心」と「身体」は別々のものとして分けて考えられがちですが、実はこの両者は非常に密接な関りがあります。
そのため、心が不調になると身体に不具合が出てきたり、逆に、身体に不調が生じると、心のバランスが崩れるといったことがよくあるのです。
心をメンテナンスする(カウンセリングを受ける)ことによって、「頭痛・腹痛・腰痛が解消した」「肩こりが治った」「眠れるようになった」「食欲が出てきた」といったことは珍しいことではありません。
また、女性にとってうれしい、「お肌がきれいになった」「お通じがよくなった」といった声が聞かれることも少なくありません。
心の問題が解消されれば、気持ちが明るくなったり、自信が出てきたりして、自然に笑顔が多くなります。これは、心に余裕が生まれてきたということが言えるでしょう。
こうなることで、周囲の人へもよい影響を与え、良好な人間関係を築きやすくなり、対人面でのストレスを減らすことも可能となります。
気持ちに余裕が生まれてくると、自然に自分をコントロールすることができるようになり、感情の高ぶりや怒りを抑えたりできるようになります。
そもそも、心が安定して穏やかになるので、イライラしたり、カッとなることが少なくなります。
また、それまでは揺らぎがちだった自分の意志を貫き通すことができるようになります。
こうなれば、難しい仕事を途中で投げ出したり、ダイエットで挫折したりせず、最後までやり通して成功させることが可能になってくるのです。
こうした成功体験は、大きな自信となり、何事に対しても前向き、かつ意欲的に取り組むことができるようになります。
カウンセリングに行くのは「自己管理ができる人」
カウンセリングを受けることで自分をコントロールできるようになると述べました。
「自分をコントロールできる」ということは、すなわち「自己管理ができる」ということでもあります。
カウンセリングを受けることで心の状態が整えば、自分自身を客観的に捉えることができるようになります。
そうなると、今の自分がどのような状態にあるかがわかってきます。
自分の状態がわかれば、この先、どうすればいいかを考えることができるようになります。
それができれば、「自分を管理する」ということが自然にできるようになるというわけです。
そもそも、自分の意思で「カウンセリングを受けよう」と思うこと自体が、自己管理ができている証拠であると言うこともできます。
自己管理ができるのなら、わざわざカウンセリングに行かなくたっていいじゃないか?
そう思われる人もいるかもしれません。たしかにその通りかもしれません。
しかし、人間というのは完璧な存在ではありません。自分では「大丈夫」と思っていても、必ずしもそうとは限りません。
「自分では大丈夫だと思うけど、もしかしたら・・・」と考え、念のためにメンテナンスをしておくということが大切なのです。
私たちカウンセラーは、人の心理のプロですから、ご本人が気づいていない不具合や不調を見つけ出し、改善方法をお伝えすることも可能です。
カウンセリングを受ける人は行動力がある
カウンセリングを受けるまでには、実は多くの工程があります。
つまり、カウンセリングルームに来られた方は、その時点ですでに数々の関門をクリアしてきた人であると言うことができるのです。
ではその関門(工程)を見てみましょう。
まず、自らの意思で、あるいは誰かに勧められて、①「カウンセリングを受けよう」と思い、②ネット検索などでカウンセリングルームを探し、③通いやすそうなところを決めて、④ホームページから(もしくは電話で)予約をし、⑤当日、そのカウンセリングルームへ行って、実際にカウンセリングを受ける。
最初のカウンセリングを受けるまでには、これだけの工程があるのです。
そのため、途中で面倒くさくなって諦めてしまう人がいるようです。
しかし、その一方では、決してあきらめることなく、数々の工程をクリアして、カウンセリングルームまで足を運んでこられる人がたくさんいます。
そのような人は、間違いなく「行動力がある」と言っていいでしょう。
多くの人がなかなか手に入れられなくて悩んでいる「自己管理能力」や「行動力」を持っている人が「恥ずかしいこと」をする人だと言えるでしょうか?
心のメンテナンスのためにカウンセリングに通う
カウンセリングに行くことが「恥ずかしいこと」ではないどころか、むしろ「自己管理能力」や「行動力」があることの証であることが、おわかりいただけたと思います。
自分の状態を顧みることもできず、行動を起こすこともできないことのほうが、ずっと恥ずかしいことであると言っていいでしょう。
みなさん、堂々とカウンセリングを受けに来ていただければと思います。
そして、友人・知人に対して、「心のメンテナンスのためにカウンセリングに通っている」と胸を張って言っていただきたいものです。
さらに、親しい人や大切な人に対して、カウンセリングを受けることを勧めてあげてください。
それだけで、人を救うことにつながることだと思っていただけるとうれしいです。